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山田様より”嬉しいご投稿”をいただきました!

山田様、ありがとうございました!(管理人)


【渡辺範彦先生-深夜のレッスン】

山田 聖剛

今から50年ほど前の話です。当時渡辺先生のご自宅は国分寺にあり、私はそこへ歩いていけるところにアパートを借りていた。それは、師匠の練習が深夜に最高潮に達すると知っていたからです。貧乏学生であった私は、レッスン料が支払えず、深夜になると師匠に気づかれないようにそっとご自宅の庭先の一角に座って、師匠のすさまじい練習を全身全霊で盗み聞きした。夏の夜も、冬の夜もそうした。そうして、なぜ師匠が世界一になったのか、その芸術性は、どこから来るのか、どのように表現されるのか、その匠の技を一心に学び取ろうとした。そうして一年たったころ、師匠の芸術性の根源の一端を、わたしは感得した。

1.「韻」を踏むフレージング

一つのフレージングの終音が、次のフレージングの終音と同一かつ均質的であること。また、一つのフレージングと次のフレージングのつなぎ目は、まるで木霊のように実にレガートに弾かれる。

このように音楽が流れていくとき、リズムが生まれて、情感があふれ出る。

それは、まさに西洋詩の一行一行が韻を踏んで詠まれていくことと一致する。

私はこれを深く聞き味わった。。

2.低音弦で歌う

通常、ほとんどのギターリストは、高音弦でメロディーを弾き、低音弦を伴奏につかう。

そのためクラシックギター音楽は、ホモフォーニックでしかなくなってしまう。しかし、

師匠は、低音弦でも朗々と歌う演奏なのでポリフォーニックなである。

3.ピアノシモの美しさ

師匠の奏でる弱音は、息をのむように美しい。師匠の演奏は、最弱音に達したとき、

やっとブリッジの方に手首が動き、メタリック音を軽妙に織り込んで、ときにはハーモ

ニックスが織り込まれるとき、

ピアニシモが更に美しく深まっていく。

4.バランスの取れた建築物としての音楽

前述のような音楽のコミュニケーションスキルが作る「確かな」音楽の土台があって、

その上に音楽の構造物が築かれていくときに、「安心」して聴ける音楽が出現する。

私は、今思う。あの深夜のレッスンは、唯一無二の宝物だったと。

師匠、本当にありがとうございました。